大切な行事が終わったあと、家族で食事に。
昼間っから生中を頼む我々。
「これは『中』とちゃうな」
「グラスやな」
などと好き放題しゃべっていたら、
「僕はな、入社式前に辞めさせられへんだん。」
といきなり父。
???
当たり前ちゃうんそれ?
幼い頃に父親を亡くした父は、高校卒業後、他県の企業に入りました。
入社式前夜、同じく高卒の人と2人で
「前祝や」
と社員食堂でビールを飲み始めたそう(未成年…汗)。
瓶が17本並んだところで、食堂のおばちゃんが
「あんたら、頼むからもうやめて」
ととめてくれたそうな。
あのままだと、入社式前に辞めさせられるとこまでいっとったわ~
と嬉しそうに語る父。
「あのおばちゃんには何かとお世話になってなあ。」
このときの生中のグラスにはキリンのマーク。
並んだ瓶も、時代からいって、きっとキリンラガーやったんやろな。
この企業での数年で、
スポーツにうちこませてもらって
大学にも行かせてもらって、
それは父の青春時代らしかったことはうっすら聞いていました。
でも、こんな風に知らないエピソードの披露もあるほど
リラックスして
家族で食べて飲んでおしゃべりしたのは
もう10何年ぶりだろうか。
こんなふうに実現されるなんて。
「ウチのことは気にせんと。
あんたはのんびり、ぼちぼちやっていって。」
折りにふれてそう言ってもらっていた10数年。
沈みゆく船で、自分だけが掴まるものを得て、
他の家族に
「あなたは生きて」と言われているようでした。
無地のしで、父にビールを贈った。
ゆっくり飲んでね、と手紙を添えて。
昔より苦味が少なくなった気がするけれど、
やっぱり
キリンラガーを。